阿蘇市では、令和6年度から「健康増進計画(第3次)」を実施しており、その中で生活習慣の改善により予防可能な疾患としてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を挙げています。COPDは重症化すると日常生活に大きな影響を及ぼすにも関わらず、その認知度は非常に低い状況にあります。まずは、認知度を上げることで早期発見・介入に繋げ、健康寿命の延伸や死亡数の減少に寄与したいと考えています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、慢性気管支炎や肺気腫などの病気の総称です。主に長期間にわたる喫煙が原因で、肺に炎症が起こり、肺の中の空気の流れが悪くなる病気です。WHO(世界保健機関)では「予防ができ、治療できる病気」と位置付けられています。
【症状】歩行時や階段昇降など身体を動かしたときの息切れ、慢性の咳や痰
肺は血液の清浄機の役割り
呼吸をするとき、息を吸うと空気が肺の中に入り、息を吐くと肺の中の空気が口や鼻から出ていきます。ですが、この空気、同じではないことを知っていますか?実は、息を吸う時に入ってくる空気には酸素が、吐くときの空気には二酸化炭素が多く含まれています。息を吸った時に空気の中にあった酸素は、肺に取り入れられ血液に溶けます。それと同時に血液が全身から運んできた二酸化炭素は肺で酸素と交換されて、息を吐くときに空気と一緒に吐き出されます。肺は、身体に不要な二酸化炭素を酸素と交換し、常に綺麗で新鮮な血液を作るための清浄機の役割があります。
肺を傷つけるもの
ニコチン・タール・ヒ素・カドミウム・一酸化炭素など200種類以上の有害物質(大気汚染物質も危険因子です)
これらの有害物質は肺に入らないように、気管支の表面の細胞が痰と一緒に外に出すようにしています。しかし、長期的に取り込むことによりその細胞が傷つくと、痰を外に出せなくなり、痰が詰まってしまいます。痰が詰まり空気の通り道が狭くなると、酸素を取り込めず息苦しさや息切れなどの症状が発症します。
糖尿病との関係性
COPDは様々な全身疾患と関連していますが、糖尿病もその一つであることが明らかになってきています。日本では、糖尿病のある人の10%以上にCOPDが認められるという報告があります。COPDによって気管支や肺が傷つきますが、その傷ついた部位を修復するために集まってくる細胞が炎症性の物質を分泌します。(怪我や感染などにより、赤くなったり腫れたり発熱する反応と同じです。)この炎症性の物質には、血糖を下げるための唯一のホルモンであるインスリンを効きにくくする作用があります。そのため、血液に乗って運ばれた物質は、肝臓や筋肉など糖を処理してくれる臓器で糖を処理できなくしてしまい糖尿病を発症すると考えられています。
阿蘇市の現状
このグラフは、阿蘇市が令和5年に実施した成人調査(20歳以上)で得られた喫煙状況の結果です。喫煙者は全体の17.5%でした。阿蘇市健康増進計画では、喫煙をやめたい人がやめること、その具体的数値目標として令和17年までに12%まで減少することを目標としています。
予防・治療をしましょう!
COPDは予防や治療ができる病気ですが、COPD患者の8~9割が未治療と言われています。COPDは認知度が低く、自分がCOPDであることを知らない人が多くいます。長年の喫煙歴などがあり「咳や痰が続いている」「息切れがひどくなってきた」などの症状がある方は、早めに病院を受診しましょう。日頃からの予防、早めの治療があなたの肺を守ります。