「阿蘇の農耕祭事」は、阿蘇神社をはじめとして国造神社や霜神社などを中心に、神職・社家・町の人々によって行われている農耕祭事です。
阿蘇神社と国造神社では、ほぼ同じ神事が執り行われています。農業にまつわる祭事は、農作業の段階に応じて年間を通して行われます。
3月、歳禰(としね)神の妃神を迎える御前迎(ごぜむか)えや、田植えを疑似的に再現する田作神事を行い、豊作を祈る予祝としての祭事である卯の祭り・田作祭。
7月の田が育ってきた時期に神が田の様子を見てまわる祭事で、特徴的な白装束を着た宇奈利(うなり)や神輿(みこし)など数十人からなる神幸行列を行う御田植神幸式(おんだ祭り)。
9月に収穫を感謝し奉納相撲や流鏑馬(やぶさめ)を行う田実祭。
また、おんだ祭りで神輿を担ぐ駕輿丁(かよちょう)が歌う御田歌にまつわる神事として、新年の歌い初めである踏歌節会(とうかのせちえ)・歌い初め、一年の御田歌の歌い納めである柄漏(えもり)流し神事・眠り流しが、阿蘇神社と国造神社のそれぞれで執り行われます。
このほか、自然災害を鎮めるための祭りとして、悪い風を風穴に封じ込める風祭、霜害を防ぐために59日間火を焚いて御神体をあたためる火焚き神事もあります。
これらの祭事は、よく古式を伝承しているとともに、四季を通じて一連のまとまりをもって行われています。このように四季を通じて豊作祈願から収穫感謝、風害・霜害の防除まで一貫した祭事がおこなわれる地域は現在ほとんど見られず、我が国の農耕生活の推移や民間信仰の姿を知り得る最も典型的な事例として評価され、昭和57年に国指定重要無形民俗文化財に指定されました。
区分:国指定重要無形民俗文化財・国選択無形民俗文化財
指定年月日:昭和57年1月14日
「阿蘇の農耕祭事」一覧
祭日 | 祭事名 | 主な場所 | 概要 | |
旧暦1月13日 | 踏歌節会 | 阿蘇神社 | 御田歌の歌い初め | |
旧暦1月16日 | 歌い初め | 国造神社 | 御田歌の歌い初め | |
3月初卯から後卯までの13日間 | 卯の祭り | 阿蘇神社 | 古代神楽が奏上される | |
卯の祭りの期間中の巳の日 | 田 作 祭 |
横筵神事(よこむしろしんじ) | 阿蘇神社 歳禰神社 |
歳禰神を起こす神事 |
卯の祭りの期間中の申の日 | 御前迎え | 阿蘇神社 ほか | 歳禰神の新しい妃神を迎える神事 | |
卯の祭りの期間中の申の日 | 田作神事 | 阿蘇神社 ほか | 農作業を模した田遊びが執行される | |
3月28日 | 春祭り | 国造神社 | 予祝の神事 | |
旧暦4月4日 旧暦7月4日 |
風祭 | 風宮神社(宮地・手野) | 悪い風を風穴に封じ込める神事 | |
7月26日 | 御田祭 | 国造神社 | 神幸行列が御田歌を歌いながら練り歩く | |
7月28日 | 御田植神幸式 | 阿蘇神社 | 神幸行列が御田歌を歌いながら練り歩く | |
8月6日 | 柄漏流し神事 | 阿蘇神社 ほか | 御田祭の駕輿丁が御田歌の歌い納めを行う | |
眠り流し | 国造神社 ほか | 御田祭の駕輿丁が御田歌の歌い納めを行う | ||
8月19日から10月19日まで | 火焚き神事 | 霜神社 | 火焚き乙女が火焚き所に籠り御神体を温める | |
9月23日 | 田実祭 | 国造神社 | 収穫を祝う | |
9月25日 | 阿蘇神社 | 収穫を祝い、流鏑馬が奉納される |