中江の岩戸神楽

中江の岩戸神楽は、阿蘇市波野大字中江の荻岳山上にある荻(おぎ)神社に奉納される神楽で、三十三座で構成されています。伝承では、約260年前の明和年間に始まったとされており、「天の岩戸」をはじめとした日本神話を演劇風に舞うものから、榊や鈴などを持ち素面で舞う素朴なものまで、バラエティ豊かな内容となっています。舞いの特徴としては、動きが大きく、振りが激しくてユーモアがあり、変化に富んでいます。

中江の岩戸神楽は現在の豊後大野市で継承されてきた豊後神楽から伝わったものです。豊後神楽は、音楽は宮雅楽の影響を受け、主な神楽である伊勢大神楽、出雲神楽、高千穂神楽、民衆の芸能である田楽(でんがく)、猿楽(さるがく)等の様々な音楽や芸能をまとめて一つの芸能として構成されたもので、御嶽流(おんたけりゅう)、浅草流(あさくさりゅう)、深山流(ふかやまりゅう)の流派に分れています。中江の岩戸神楽はこの中でも御嶽流の流れをくんでいます。残念ながら、伝承されていく中で古文書等の史料が失われてしまったため、起源や経緯についての記録は残っていません。

中江の岩戸神楽が国選択無形民俗文化財に指定された当時は、荻神社の大祭で十~十五座程度しか舞われておらず、三十三座全てを知る人間が数名しかいない状況でした。そんな中、平成2年1月に熊本県立劇場において、当時館長である鈴木健二先生の監修のもと24時間全国衛星放送で三十三座完全復元公演を行い、大きな話題となりました。これを契機に、地元中江地区では、この伝統を後世に残していこうと中江岩戸神楽保存会が結成され、平成4年からは毎月定期公演を実施するようになりました。

現在では、毎年4月から11月まで第1日曜に開催される定期公演(10月を除く)だけでなく、県内外様々な地域での公演も行っています。また、地元の小中学生への継承活動も続けられており、定期公演や10月に行われる神楽フェスティバルでは、その雄姿を見ることができます。

曲目一覧

一番 五方礼始(ごほうれいし) 十八番 神使
二番 随神 十九番 礼始
三番 平国 二十番 柴曳(しばひき)
四番 返矢(かえしや) 二十一番 岩戸開
五番 天皇遺(てんこうき) 二十二番 柴入
六番 綱の母 二十三番 天の〆
七番 神遂(かむやらい) 二十四番 綱切
八番 舞入 二十五番 誓約(うげい)
九番 貴見城 二十六番 公矢
十番 朝倉返 二十七番 荒神
十一番 綱武 二十八番 心化
十二番 降臨(ごうりん) 二十九番 平鉾
十三番 地割 三十番 五穀舞
十四番 武者 三十一番 太平楽
十五番 宮〆 三十二番 岩戸舞
十六番 八雲払 三十三番 大神(だいじん)
十七番 魔払

 

岩戸開

 


区分:国選択無形民俗文化財

指定年月日:昭和50年12月8日

  • 教育委員会 教育部 教育課
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